【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
「なぁ、真梛斗。
俺がこれから、如月を守るから……お前と俺が愛し続ける如月は、
きっちり俺が守っていくから、そっちで見守ってくれよな」
そう宣言しながら、俺は如月の肩を抱いた。
墓参りから帰った後、マンションには、
如月の妹二人と友人たちが顔を見せていた。
「澪、美織……」
友人二人の姿を確認した途端に、如月は嬉しそうに抱き合う。
「如月、もう、心配したんだから。
でも、安心した。
いい旦那さん、見つけたねー。
ちゃんとアタシにも紹介しなさいよ。いい男」
澪さんは如月に再び抱き着く。
「私も本当に心配しましたのよ。
早谷さまからご連絡を頂いて、心臓が止まるかと思いました。
龍之介と慌ててこちらに戻ってきて、今は……光輝様の介入もあって、
私と龍之介の結婚も親が受け入れてくださいました」
三枝が話した途端、驚いたように如月が俺に視線を向ける。
「ありがとう」
とびっきりと笑顔で嬉しそうに微笑むアイツ。
「出来ることをしたまでだ。
ただ三枝さんにしろ、早川さんにしろ、
如月の友達の居場所を調べてくれたのは由毅だよ。
アイツにあった時に、お礼言ってやってくれ」
そう言って如月に告げる頃、
友達と一緒に抱き合う姉をそっと遠巻きに見ている二人の女の子。
「ほらっ、星奈ちゃん、陽奈ちゃん行っておいで」
そう言って、二人の背中を押してあげる。
「えぇ。
星奈さま、陽奈さま、頑張ってくださいませ」
そう言って、三橋も腰をかがめてエールを送る。
俺たちの方を何度か見ていた二人の妹たちは、
『お姉ちゃん』っと声をそろえて如月に声を出した。
だけどその声は小さくて、はしゃぎ続ける如月の耳には届かない。
再び振り向いた双子に『もう一度、勇気を出して』っと伝えると、
再び頷いた双子は、深呼吸をした後大きな声で『如月お姉ちゃん』と名前を紡いだ。
その声に気が付いた如月は、
慌てて声がした方へと視線を向ける。
早川さんと三枝さんも如月から離れて、
声がした方へと視線を向ける。
「えっ……?
星奈?陽奈?」
戸惑うように呟いた二人の名前に、
妹たちは如月へと抱き着いた。
そして体と体の間で押しつぶされて、
少しぐちゃぐちゃになった花束を思い出したように気が付いて、
慌てて離れると、「姉ちゃん、退院おめでとう」っとその花を如月に差し出した。
嬉しそうに二人から花束を受け取った如月は、
年の離れた双子の妹たちを両手でぎゅっと抱き寄せた。
「さてさて、晩御飯が覚めてしまいますわ」
俺の隣、家族が抱き合う姿を視ながら涙ぐんでいた三橋が、
声を張り上げる。
「さっ、今宵は妻、如月の退院祝いの為に集まってくださって有難うございます。
ささやかではございますが三橋が皆様の食事をしたくしております。
如月を囲みながら、賑やかなひと時を」
部屋の中には、如月の嬉しそうな笑い声が溢れていく。
そんな時間が今は俺自身も嬉しくて。
もっともっと、笑顔が溢れる幸せの風景。
そんな幸せのビジョンを描き続けながら、
俺たちの新しい生活ははじまった。