【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

2.羽根を引き裂く金糸雀 -光輝-



「今日の会議はこれで終了します。

 昨今、アジアの情勢に少し影が見えているから、
 我が社も、利益が少しでも出るように各自戦略を練ってください」



三杉財閥の経営会議。

親族と役員たちが1週間に一度、大広間のテーブルを囲んで会議を行う。




俺、三杉光輝(みすぎ こうき)も、
神前悧羅学院高等部の頃から参加する必須行事になっていた。




ゆっくりと椅子から立ち上がって深々とお辞儀をすると、
それぞれが部屋を退室していく。


会議が終わると、父が俺と双子の弟の竣佑(しゅんすけ)を呼び止めた。





父に呼び止められるまま応接室へと向かうと、
そこには母の実父にあたる、早谷(はやせ)コーポレーションの名誉会長である祖父が座っていた。



「お義父さん、お待たせしました」

「いやっ、光佑(こうすけ)君も、光輝も竣佑も忙しい時間に済まないねー」



そう言って祖父は俺たちへと笑いかけた。



「光輝も竣佑も実に逞しくなったね。
 こんな風に、うちの由毅(なおき)や晃介(こうすけ)にも、
 立派になって欲しいよー」


そう言って祖父は、不器用な可愛がり方をする二人の孫の名を呟いた。



「それで、お義父さん。光輝と竣佑に話したいこととは……」


父が口を開くと、鞄の中から祖父は一冊の写真を取り出す。



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