【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
「如月、ギターを奏でてよ。
そして歌えそうなら、俺の為に何か歌って。
心配しなくても、この家は防音室になってるから。
如月がどれだけギターを鳴らして歌っても、
近所迷惑にはならないよ。
一緒に生活するのがわかったその日、
ちゃんと防音室になるようにリフォームしてもらったから」
突然の衝撃。
「嘘っ……。
そんなのアタシ、何も聞いてないんだから。
遠慮気に音出して、こそこそしてたアタシがバカみたいじゃん」
そんな憎まれ口を叩きながらも、
やっぱり光輝がアタシの為に、このマンションの部屋に防音設備を導入してくれた気遣いが嬉しくて。
「如月、歌ってよ。
ほら、俺の隣に座ってさ」
そう言って、今度は光輝が隣に呼びよせるように、トントンとカーペットを指先で叩いた。
そんな光輝の優しさに、
狭霧のスタイルも自由にしてもいいのかもしれないと思えた。
今、歌いたいようにアタシは歌い続ける。
そう踏ん切りがついたアタシは、自分の部屋に相棒を取りに行く。
そして、光輝の隣に座って、ギターを構えた。
そう……今日から、新生・狭霧でいいじゃない。
今までの素直じゃない尖ったアタシばかり見てた人には、
新しい狭霧を知って貰ったらいい。
アタシはそう。
心から愛する人に、アタシの歌を届けたい。
だからもう一度、歌うんだ。
そんな思いをコードにのせて、
ゆっくりと思いを乗せて歌い始めた。
アタシの中で『声』が再び、
息吹いた瞬間だった。