【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
「如月、凄く綺麗ですわ」
「ほんとほんと、いい顔してるよ」
そう言ってアタシの花嫁姿を喜んでくれた。
「ねぇ、美織。龍之介は?
招待状、一緒に送ったでしょ?」
「龍之介は貴方の旦那様に挨拶に行ってますわ。
私たちの結婚が許されたのも、
如月の旦那様のおかげですもの」
そう言って美織は微笑んだ。
前にもそうやって、美織は言ってたけど、
光輝は何時、アタシの友達のその状況を知って、
手助けをしてくれたんだろう。
そんな疑問が残りながらも、
話さなくても、どんなに些細なことでも気が付いて、
先手先手で手を打ってくれる、
そんな光輝が益々好きになってる。
やがてアタシは控室で親族たちに挨拶をした後、
ホテル側が用意した介添人に声をかけられて控室から移動を始めた。
今からこの姿を光輝に披露するんだ。
そう思っただけで、
ドキドキして……緊張からか吐き気すら感じながら、
ゆっくりと皆が待つ場所へと歩き出した。
途端に周囲からわきあがる歓声と共に、
その場所にいた人たちの視線がアタシへと集中しているのがわかる。
少しでも早く光輝の傍に辿り着きたくて、
隣で安心感が欲しくて行こうとするものの、
光輝の周りには母校で出会った大勢の仲間たちが囲んでいて、
すぐに近づけそうな雰囲気ではなかった。
「ほらっ、光輝。
花嫁さんの登場だよ」
そんなアタシに気が付いて、
周囲にした仲間たちが気をきかせて光輝に声をかけてくれるものの、
アタシの姿を視てるはずの光輝なのに、
何も感想をいってくれなかった。
そんな光輝に、
ちょっと内心ムッとしちゃったアタシ。
「如月さんが綺麗すぎて、声も出せないってさ」
一綺君の一言で周囲の人の笑い声と共に、
アタシの怒りも沈んでいった。
そんなひと時を過ごしていたアタシたちだったけど、
挙式の時間が近づいてきて、
皆は一足先にチャペルと移動していった。
いよいよなんだと緊張が高まってきたアタシの傍、
ババアが近づいてきた。
「如月さん、そろそろベールダウンの時間でしょ」
本当は三橋にしてほしかった。
だけど……そうはいかなくて、
アタシはまだ溝が埋まりきらないババアにしてもらう形になった。
腰をかがめてババアの手がベールにかかったくらいの時、
「光輝様、遅くなりました。
よしさん、はつさんをお連れ致しました」っと、
居酒屋さんの常連だった新田さんが、
おじちゃんとおばちゃんを連れてきてくれた。
本当は招待したかったのに、
直接の関係がないからと遠慮して、
招待状を送るのを諦めた大切な二人。
ずっと心に引っかかったままだった。
そんな二人が、
アタシの前に姿を見せた。
光輝様って新田さんが言っていたから、
このサプライズも光輝が手を回してくれたんだと思う。