ディモルフォセカの涙
第一章 愛したい
片方だけの靴
雲の狭間から射す光
閑静な住宅街に何棟も立ち並ぶマンション
その外観は様々で、我こそが一番だと何ともせめぎ合っている様にも見える。
その中の一室----
朝の空に、流れる雲
ベランダにて洗濯物を干す手を止め、じーっと雲の様子を見つめる視線。
物干し竿に干したタオルの裾が突風に靡くとくるっと竿にかかる。
タオルを元に戻しパンパンと叩く左手、その薬指と中指には指輪が光る。
再度、吹きかける突風に乱れる髪を押さえると、脳裏に浮かぶ光景
風に靡く、長い髪----
『……恩はある
だけど愛はない』
ふと、蘇る過去----
木霊する歌声
どこまでも響く音
どこまでも
どこまでも……