ディモルフォセカの涙

「ユウ、気にいらない?」

「ううん、いいね
 かわいい」

「じゃあ、これで決まり」

「わたしはいいよ
 今日はミカの付き添いだから……」

「何言ってるの、セールだもん
 今日買わなくちゃ、この服
 無くなっちゃうよ」

「そうだね……」


 私は、実花さんに勧められたオフホワイトのカジュアルなセーターを買った。ダボッとした感じがとても可愛く指まで隠れる袖もいい、嫌いなデザインではなかった。

 実花さんの洋服も選び終えた後、私達は休憩しようと以前、彼方も交えて食事をしたあのカフェへと向かった。

 その途中、雑貨店の前を歩いていると二人の目に留まるものがある。それは、入口に置かれた小さなクリスマスツリー、そこに飾られた種類も豊富なオーナメントの数々、その可愛さに飛びつく二人は、大興奮のままに飾りを手に取った。


「すごい、かわいい

 どれもこれもかわいい
 全部欲しいぐらい」

「ミカ、これなら季節訪わず
 普段も部屋に飾れるよね」

「うん、そうだね
 そうだ、一緒に暮らす部屋に
 幾つか飾ろうよ

 ……ユウ?」

「ミカ、そのことなんだけど
 話があるの、それが……」

「話なら、カフェでしようよ
 
 ここは、後で寄るとして
 行こう」


 私達は、手に持っていた飾りを元に戻して、手を繋いで5階へと向かった。----カフェ内も、もちろんクリスマス模様。壁に飾られたユニコーンのハンティングトロフィーもふわふわの白い髭を装着されサンタ帽から角が突き出ている。
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