ディモルフォセカの涙
 そう、ここに泊まると言うことは、もちろん、お風呂にも入らせてもらい、お布団にも寝かせてもらうということだ。以前、映画を見て遅くまでここに居たことはあったけど、泊まるのは今回が初めて。

 友達の家に泊まるだなんて、あれは中高生の頃----最近だと彼方の事故の後、あれ以来だな。変に緊張する私に実花さんは言う。


「自分の家だと思って、ここにある物
 何でも好きに使ってね」

「うん、ありがとう」

「何か飲み物、淹れるね」


 お風呂の湯張りを待つ間、私達は買って来たものをテーブルの上にそれぞれ出して行く。と言っても、私はセーターと数あるクリスマスのオーナメント・飾りの中から数個買っただけで、あとはお土産のチョコレートの入った缶を出した。

 実花さんはいろいろと購入していて、その中でも洋服が多い。同じデザインの服を色違いで何組か買っていた。他には、アクセサリーに靴。

 すると実花さんは、私の目の前で着ている洋服を脱ぎ出した。あらわになる下着姿の彼女、視線を逸らす私に実花さんは新しい服を着て見せる。


「どうかなぁ、似合ってる?」

「うん、いい感じだよ」

「じゃあ、こっちの色はどうだろう」


 脱いだ服をポイッと乱雑に扱う実花さん、ソファーから床に落ちた服を私は拾う。----買って来たばかりの新品の服にしわが寄るのを避けるため、私は洋服を畳んだ。

 ううん、それもあるが、本当は実花さんの下着姿を見ないようにした。
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