ディモルフォセカの涙
 時刻は19時を過ぎた頃----ステージ上にカナタさんの姿が在る。左右、メンバーの姿を見つめ頷くとそれを合図に音は流れる。

 無口なカナタさんは、曲と曲との間でファンに向けてあまり話すことはしない。その為、次から次へと音楽は流れ、あっという間に時間は過ぎてステージは終わる。

『もう、終わりなの』『愛想がない』『ボーカルは、ショウの頃の方が良かった』等と言う声もよく聞こえてくるが、私は大満足。

 曲が終わればその次の曲を私は速攻で聞きたい。息つく間なんていらない。

 そりゃ、話す声を聞けるならば何時間だって聞いていたいけれど、ステージの上で話すことなんてたかが知れている。『おまえら~』みたいな上から目線の言葉はいらないし、自分を大きく見せる為に吠えてるだけのうるさいの、いらない。

 そんなの彼には似合わない。それに、『あの人何考えてるか分からない』ぐらいが丁度いい。

 その方が、知りたくて知りたくて堪らなくなる。男は、無口な方がいい。まあ、これは全て私の理想だけどね。お喋り上手な楽しい人を好む女性は多い。

 カナタさんは、私にとっては理想の男性、全てがパーフェクトなの!
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