ディモルフォセカの涙
「えっ、あっ、人を待ってるの
 大丈夫だから……」

「駅まで送りましょうか?」

「いえっ、大丈夫です……」


 心配げな男性は、私の腕を掴んだまま放そうとはしない。そうしている間にも、どんどんどんどん、カナタさんとの距離が離れてく----


「大丈夫だってば!放してよ
  
 見失っちゃうじゃない

 放してったら!

 もう、見失いたくないのに……」


 見つめた地面、揺らいでゆく……涙で揺らいで、私は立っていられずにその場にしゃがみ込んだ。


「大丈夫、知り合いだから
 ありがとう」


 その声に顔を上げると、そこにカナタさんが立っていた。私の腕に触れて、私をその場に立たせてくれるカナタさん。ふらつく足元、私は咄嗟にカナタさんの腕を取る。

 すると、これ以上ないってぐらい幸せな気持ちになった。

 私の、欲する人……


「彼、ただのいい人」

「そうなんだ、ごめんなさい」

「俺に言われても

 そんな服で、(ここに)居ない方がいい」


 見るからにお洒落を楽しんでいる、女の子っぽい服装に甘い色味。

 ユウさんは好んで選ばないだろう、色にデザイン。


「ユウさんみたいな服ならいいの?
 あなたのこと待っていても」
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