ディモルフォセカの涙
 久しぶりに嗅ぐ自宅の香り。

 それは、私の好きな香り、私の好きなものに囲まれた私だけの空間----

 私は誰の目も気にすることなく、着替えを済ませることもなく、疲れた体を大の字にしてベッドに飛び込んだ。


「フー、しあわせ」


 すると、私の手に触れるものがある、それはいつも一緒に眠るぬいぐるみのウサギ、そう彼方が、プレゼントしてくれた耳の垂れた白ウサギ。

 彼方のギターケースにぶら下がる手作りウサギのマスコット、白と黒、半分半分のその姿が珍しくて幼い頃、私はいつもそれが気になっていた。

 真ん中でくっきりと二分するウサギ。(今は薄汚れて、灰色と黒のため気にならない)


『ユウ、ほらっ、ウサギ
 
 シロだけ売ってた』

『ユウにくれるの?わーい

 半分、黒くぬるのはどうかな?』

『やめた方がいいよ』

『だね、ありがとう、カナタ
 タカラモノだよ』

 
 ぬいぐるみを抱き寄せ、ギューッと抱きしめて眠ると、大好きな匂いがして私は目を閉じた。

 ここは、私、ユウのままで居られる時間----寝入り端、私の耳元で囁く声は言う。
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