ディモルフォセカの涙
「……
ギター
愛して大切にしてやって」
「ああ、うん、任せて」
そうか、彼方はギターとの別れを寂しがってるんだ……そうだよね、片時も離れず、ずっと一緒に居たんだもの。
私なんかよりもずっと長く、ギターは彼方の傍に居て彼方の人生のその全てを見てた。
彼方の愛するギターを担ぐ私を、あなたはその腕に愛しく抱きしめる。
「ユウ、君は幸せ?」
「うん」
私を抱きしめる腕を解いた彼方は、私の頭を優しく撫でてくれた後、視線を合わせることなく私と距離を取る。
「そうか、よかった
じゃあ、気をつけてお帰り」
そのまま彼方は振り返ることなく部屋へと戻り、バタンと扉は閉まる。
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彼方が、帰る私を抱きしめたこと
『次はいつ会える?』----そう聞いたこと
彼方の行動とその言葉の真意を、私は深く読むことをしなかった。
彼方はわたしに、会いたいと思ったからそう言ったのに……。
この時、私を抱きしめる彼方の隠された思惑・恋い慕う気持ちに、ほんの少しでも気づけていたら傷つかずに済んだかもしれない。