ディモルフォセカの涙
彼方の住むマンションから、彼方の大切なギターを背負って歩く私の姿を、彼女は見てる。
何も知らない私は、このまま何処に行く。
「ユイ先生」
音楽教室で一度だけ呼ばれたその名を呼びながら、私の元へと駆け寄って来る人が居る。
その姿は寒空の下、汗にまみれ、いつものパリッとした姿からは想像できない。
「ユウちゃん
こんなところに居たのか
心配させやがって、大丈夫か?
探したんだぞ」
「オオタさん
ごめんなさい、私……
音楽教室は今どうなってますか?」
「あそこには帰らない方がいい!
……今は
シバノと言ったかな、君のマネージャーから
連絡先を預かってる
彼に連絡するよ、迎えに来てもらおう」
「はい、お願いします」
わたしは、何処に行けばいい。
わたしの居場所はどこに在る。