ディモルフォセカの涙
----近づけない
正解は、誰も近づけさせない!だったりする。
それが、僕の本音。
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『いとこみんなでおばあちゃんお手製の
浴衣着てたね』
『楽しかったね』
一概に、同意はできない。----帰り道、下駄を履いたユウには泣かされたっけ。
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遠い遠い昔の記憶を辿る。
花火大会を終え、ぞろぞろと帰宅する人々の群れ。夏の終わり、寂しげな空を見上げる浴衣姿の僕の足元には、赤い鼻緒の下駄。
僕のとなり、並んで歩く浴衣姿の女性は、とても申し訳なさそうに僕に話しかけてくれている。着慣れない浴衣に下駄で彼女に合わせて歩くのがやっとの僕。
「カナタ君、ごめんなさいね」
「いえっ、僕は大丈夫です」
「足、痛くない?」
「はい、ヨシコさんは大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ」
「おかあさん、おかあさん、早く」
「もう、あの子ったら」
ついさっき、草履を履いた足が痛いと立ち止まって泣いていたユウは、僕のサンダルに履き替えてスタスタとご満悦。親戚の中、一番先頭をはりきって歩いている。