ディモルフォセカの涙
例えカナタさんの仕事が見つかるまでの、短い間の期限付きの活動だったとしても、『ディモルフォセカ』で歌うカナタさんを見れるならばそれで良い。
「(仕事)見つからなきゃいいのにぃ」----つい口を出てしまった私の言葉に、カナタさんの口元が微かに緩んだ。
「おまえも、俺を働かせない気かよ」
『おまえも』----とは、誰の事だろう?
「カナタ、働くの、しんどいよぅ」
「知ってるよ」
いつの間にかグラスの氷は解け、その水さえも飲み切ってしまった私は、彼らと別れその場を後にした。
クリスマスは、まだ終わってないの?
今日はなんて一日が長いんだろう……まだまだ、夜は続いているの?
もう、いい加減、疲れた……
賑やかな夜の街を一人、お酒に酔って歩く私の足取りはおぼつかない。ふわふわと宙に浮いてる感じで、一歩進めば二歩戻る。
「フー」----深い息を吐いた私は、タクシーを拾って家に帰ろうと、道路沿いに出て行こうとしたその時、私の腕を掴む人がいた。
「何やってる、危ない」
「カッ、ナタさん?」
「ああ、送って行く」
「えっ、いいんですか?」
「おまえに聞きたいこともある」
貴方の聞きたいこと-----それが私にはもう分かる。