ディモルフォセカの涙
「いえいえっ、そんなことはございません!
 ほらっ、いろんな形がありますもの……」


 進行役の彼女もさすがに冷や汗を掻いているのか持っていたハンカチで額の汗を拭った。けれどそこはプロ、きちんとまとめるあたりすごい。


「憧れの気持ちはもちろんのこと
 同性に抱く友情関係、親を慕う気持ち
 そう、ペットを想う気持ちもまた恋に
 通じるものがあるかと思われます

 ……

 皆様にはこの後、新曲を聞いて頂きます」


 最後には、こうして余計なことまで言っちゃって……場の空気を悪くしちゃった。

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 でも、それは本当のこと!

 自分が一番よく分かってる、私が描くものは全て誰かの受け売り、姉妹や友達の恋の悩み、読んだ本や漫画・ドラマに映画の中で起こる恋愛模様、美しい絵画等からインスピレーションを受け取りそれらを材料に私は創作活動をする。

 私の思い描く世界に興味を示してくれる人は今や多数、支持してくれる人もどんどん増えつつある。それはとても喜ばしいことで、それに応えたい気持ちはものすごくある。

 曲を作り歌うことは大好き!次から次へと曲は生まれる。

 だけど誰かと真剣に向き合ったこともなく、愛し愛される恋愛をしたことのない私にいつまで書けるだろう。友情や応援歌ならば書けるだろうか?
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