ディモルフォセカの涙
 私はソファーの端に腰かけ、テーブルに置かれた袋の中から、お昼ご飯のバーガーを一つずつ取り出した。


「はい、飲み物」

「ありがとう

 飲み物なら、ここにもあるよ」


 買って来た珈琲に、炭酸ジュース。


「サンキュー、何?」


 テーブルの前、床に座った彼方はお昼ごはんの包み紙を見つめる。


「ライスバーガー、好きでしょう

 フィッシュバーカーもあるよ」

「それはまた気が利くねぇ」

「まあね、カナタの好みは任せて

 ほらっ、食べていいよ」

「ありがとう、いただきます」


 彼方は大きな口を開けて、ライスバーガーにかぶりついた。包み紙の中、崩れていないライスバーガー。


「どうやって作れば崩れないんだろう」

「潰してるんじゃない」

「そうだね、お米というよりもお餅状態だね

 ……

 カナタッ、どうかした?」

「いやっ……」


 私が買って来た炭酸ジュースをグラスに移して飲む彼方は、何かを考えているみたい。


「『……ぶっ潰させて頂きます!』
 
 ユウ、あれからアイツ
 
 ミカって言ったっけ、奴に会った?」

「ヤツって

 ミカさんになら会ってないよ」

「知ってるのか、その、連絡先とか?」

「ううん、知らないよ
 偶然、二度会っただけで友達じゃないし」

「そうか」

「もう、会えるかどうかわからないよ」
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