ディモルフォセカの涙
「ユウさん、ほらっ乗って」
「あっ、ごめんなさい」
待たせていたエレベーターに私が乗ると閉まる扉、行き先を知らせるボタンは、4階が光っている。
4階----ギターケースを背負って帰って行ったマナさん、彼女に譜面を届けた実花さん。
「ミカさん
もしかして
音楽教室に通ってるの?」
「ふふっ
違うけど、違わないかな」
「えっ?」
「こっちよ
片づけるところだったから
まだ少し散らかってるけど……」
片づけるところだった----ということは、実花さんは音楽教室の先生!
「ミカさん、先生なの?」
首を傾げて見せる、実花さん。
「うーん、どうだろう?
今だけは、私が主に先生担当かなぁ」
「すごい」
「すごくなんかないよ、ぜんぜん」
実花さんの職業に驚かされながら、案内されて立つ部屋の前----『オステオスペルマム音楽教室』と書かれた看板表札が掲げられた扉を開くと、そこには小中学校の音楽室ほどのスペースが広がる。
疎らに置かれた椅子にホワイトボード、その手作り感とは反対に、とても立派なピアノが置かれている。ギターもベースも私が見る限りとても高価な物だ。
用紙が貼られたホワイトボートを慌てて裏返す、実花さん。
「恥ずかしいわ、お遊びみたいでしょう
本物のアーティストさんから見れば
こんな……」