ディモルフォセカの涙

「好き勝手した挙句、今は全て
 中途半端のままに放置して
 
 自分はお気楽に放浪の旅に出て
 後始末は全部娘に背負合わせる
 ほんと、ふざけるなーだよ
 まったく!ハァー」

「ミカさん、大丈夫?」


 強い口調とは裏腹な実花さんの、曇っていく表情。


「親の話、久しぶりにしたら
 熱くなっちゃった
 
 あー、喉、乾いたなぁ
 冷たいジュース飲みたい
 
 買いに降りなきゃ」

「あっ、だったら私が……」

「ううん

 一緒に行こうって言うか
 そうだ、ユウさん
 この後って時間ある?」

「ええ、まあ」

「そう、じゃあ
 お酒、飲みに行かない?」

「えっ、でもっ」

「まだまだ聞いてほしいな
 私の話、ダメかな?」


 とても寂しそうな顔をしている、実花さん。----私は彼女を放って帰ることできない。


「ううん、わたしでよければ
 聞きます」

「本当、じゃあ、行こう」

「えっ!片づけは?」

「そうだった、すぐ済ませるから
 待ってて」

「私も何か手伝います」

「ありがとう

 じゃあ、椅子を重ねて
 あの横に片してください」


 私は言われたように、重ねた椅子を長机の横の空いているスペースに片づけていく。実花さんは、ホワイトボードにマグネットで張り付けられた用紙を外してまとめていく。
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