ディモルフォセカの涙
 通された部屋はこれまた雰囲気の違う、壁までもがピンク色で統一されたとても可愛らしい部屋模様。色の深みを変えて出される演出がとても素晴らしく、見るところどころでイメージを変える。

 かわいいも、華やかも、艶やかな色っぽさも感じられるその部屋で、実花さんと二人きりでお酒を飲む。

 女友達と過ごす時間----それは、学生時代を思い出す懐かしい時間、夢を実現した忙しい日々の中で忘れていた時間、無くても何の支障もなかった時間。

 乙女心を擽る空間で、尽きることのない実花さんの話を私はずっと聞いている。


「そうでしょう

 難しい名前、父がつけて……

 私も未だに、教室の名前
 口にする時、間違えないか
 気が気じゃないもの

 オス、テオ、スペ、ルマム
 音楽教室へようこそ

 ほらっ、時間かかっちゃう」

「オステオで、一度切って
 スペルマムでどう?」


『ディモルで一度切ってみれば』----私はこれで、その名を間違えずに呼べるようになった。


「あっ、それいい
 
 オステオ
 スペルマム
 音楽教室へようこそ、言えた

 ……

 ねえ、ユウ、知ってる
 オステオ
 スペルマムは
 花の名前なのよ」

「そうなんだ」

『カナタ

 ディモル・フォセカって
 意味は何?』

『花の名前さ』
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