ディモルフォセカの涙

「どうなんだい?」

「いえっ、友達です、今は……」

「今は、と言うことはいづれは
 そういった関係になるつもり?」


 彼の問いかけに何故か動揺してしまう私は、返す言葉が出てこない。----それは図星だったからなのか、それともあり得ないことだったからなのか、どっちだろう?答えに困っている私。


「まあ、どうでもいいけど
 彼女には、気をつけた方がいいよ

 見てたよね、さっきの俺達のこと?

 あのままだと、俺達は100%キスを
 していたよ
 
 彼女は、昔から思わせぶりな態度が
 お得意様で、狙った獲物は絶対に
 逃がさない、必ず彼女に堕ちるよ

 君も、くれぐれも気をつけて
 本当に大切なもの、その何もかもを
 彼女に食われてしまわないように」


『本当に大切なもの、その何もかもを』----今の私にとって、本当に大切なものって何だろう?それにしても、私に実花さんのことを話して聞かせるこの男性は、誰?


「あの、あなたは?」

「ああ、俺、俺は太田
 お嬢には、王って呼ばれてるよ
 
 王様って意味ではなく
 彼女、小さい頃に私の苗字である
 オオタがうまく言えなくてね」

「小さいころ?」

「ああ、まあ、その話はおいおい

 今言えることは、俺はここの
 元雇われ講師
 
 生徒が増えるとかで、また
 ここに務めることになりそうだ

 そうなったら、どうぞよろしく頼むよ」
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