ディモルフォセカの涙
開かれた、扉----あなたもわたしも、扉が開かれるこの時まで気づかなかった。
ここに在る、愛しい人の存在に。わたしは驚き、そして心からあなたに会えて嬉しいと思った。
駅に降り立つ、彼方……真っ青な上着を羽織る貴方は、相変わらずかっこいい。
この偶然を、どこかで願っていた私がいた。----実花さんの音楽教室の最寄り駅は、彼方の家の最寄り駅と同じだったから、この駅に降りる時、あのスーパーで買い物をしている時、あそこであの場所で、彼方に偶然会えるんじゃないか!私は、いつもほんの少しそれを期待していた。
「ユ……」
「ユウ、早く乗って」
「うっ、うん」
私の名を呼ぶ彼方の声に被さる実花さんの声。私の腕を強く引き乗車させた実花さん。すると、閉まる扉、私はその手を解き扉に手をかけた。そして、大きな声で言うの。
「カナタ、連絡する!」
私の声が聞こえたのか、彼方は扉の向こう側で「うんうん」と頷いて見せてくれた。いつもの彼方がそこに居て、私は嫌われていなくて良かったとホッと安堵した。
遠くなる彼方の姿を見つめる私の後方から、同じく実花さんも彼方のことを見ていた。
空いている座席はたくさんあるのに、私達は扉の前に立っている。実花さんが重い口を開く。
「ユウ、彼に連絡するの?
それで、また
同じこと、繰り返すんだね」
「同じこと?」
ここに在る、愛しい人の存在に。わたしは驚き、そして心からあなたに会えて嬉しいと思った。
駅に降り立つ、彼方……真っ青な上着を羽織る貴方は、相変わらずかっこいい。
この偶然を、どこかで願っていた私がいた。----実花さんの音楽教室の最寄り駅は、彼方の家の最寄り駅と同じだったから、この駅に降りる時、あのスーパーで買い物をしている時、あそこであの場所で、彼方に偶然会えるんじゃないか!私は、いつもほんの少しそれを期待していた。
「ユ……」
「ユウ、早く乗って」
「うっ、うん」
私の名を呼ぶ彼方の声に被さる実花さんの声。私の腕を強く引き乗車させた実花さん。すると、閉まる扉、私はその手を解き扉に手をかけた。そして、大きな声で言うの。
「カナタ、連絡する!」
私の声が聞こえたのか、彼方は扉の向こう側で「うんうん」と頷いて見せてくれた。いつもの彼方がそこに居て、私は嫌われていなくて良かったとホッと安堵した。
遠くなる彼方の姿を見つめる私の後方から、同じく実花さんも彼方のことを見ていた。
空いている座席はたくさんあるのに、私達は扉の前に立っている。実花さんが重い口を開く。
「ユウ、彼に連絡するの?
それで、また
同じこと、繰り返すんだね」
「同じこと?」