ディモルフォセカの涙
「だってそうでしょう
彼はユウのこと
愛していないんだもの」
そう、彼方は私のこと愛していない。----彼方に近づけば、私はまた傷つく日々に戻り、愛してくれない彼方に可愛くない態度を取ってしまう。嫌な女になって、自分を卑下してしまう毎日。それじゃあ、ダメだ。
そして何より、私のことを好きだと言う実花さんのことも傷つけてしまう。
振出しに戻るのは、やめた方がいい。どんなに彼方が恋しくても彼方に近づきすぎるのはいけない。『自分を大切にしなきゃ』だったね。今はまだ早い、もう少し時が経てば彼方に笑って会えるよね。今はまだ、距離を取る方がいい。
「また、辛い思いするの?
わたし、そんなユウのこと
見たくないよ
そんなのつらいよ」
実花さんは、瞳いっぱいに涙を浮かべて私のことを見つめる。そして、私の手を取りギュッと繋いだ。その手に零れ落ちる、実花さんの綺麗な涙。
「ミカ……
心配しないでいいよ
カナタには連絡しないから」
「本当、ユウ」
「うん、今はまだしない
カナタのことちゃんと従兄だと
思える日が来るまで」
「そうだよ、それがいいよ
よかったぁ
ユウ、あそこ座ろう」
「うん」
空いている席、実花さんの隣に座った私は膝の上に、鞄とお土産の入った紙袋を置いた。