飛び降りて、一緒に死のっか。
「……君も、死にに来たの?」
ひとは、こんなにも繊細な声が出せるのか。そう思った。
細い糸のよう。
透明な水のよう。
低すぎず高すぎず、可愛いとかっこいいの狭間にいるみたいな。
「そうだよ」
「同じだね」
そんな彼と一緒に、私は微笑んだ。
彼が自分の右隣をぽんぽんと、優しく叩く。私はそこに座った。
「名前は?俺は、緑(りょく)」
一人称が俺だということ。俺と言うとき、最初の文字が低くて、少しかすれ気味になること。
「私は、和嘉乃(わかの)」
「和嘉乃」
「なに?」
ゆっくりと目を伏せる仕草。
「素敵な名前だったから、呼んでみたくなった」
それらすべてが、彼は穏やかで優しいひとだと知らせていた。