【番外編】ないじつコンブリオ
「角野先輩」
「ん?どした、華ちゃん」
「あの……ですね。今日、自分……た、誕生日なんです」
「なっ、そんなん初耳やで!もっと早う言うてよ!!
え、じゃあ、何か欲しいもんとかある?」
「何も要りません。そのお気持ちだけで、本当に十分なんです」
「えー……うーん。あ、じゃあ!」
角野先輩は突然に、自分の片手を両手で包み込む様にした。
そして、誕生日おめでとう、と満面の笑みで言葉をくれた。
それだけで、もう十分だった。
今日の社内では、いつもとは少し違う会話を交わしている。
曇天の下、紫陽花前にて。
おわり。