【番外編】ないじつコンブリオ

「だって…………なんか、上手く言えないから」



上手く言えない。

今言ったのですら、声は上擦りそうになるし、顔は強張って絶対に変な顔になる。

おまけに、レバーも喉に詰まりそう。

毎回、栗山くんの下の名前を呼ぶ度に、こんな変顔をかましていては、笑われてしまう。

やっぱり呼ぶ勇気が、どうしても出てこない。

少し気まずささえ、感じる。

改めて、栗山くんの顔を見る。

目が合うと栗山くんは、やっぱりにっこりと微笑んだ。



「でもさ、このままずっと『栗山くん』だとさ、結婚したときに困らない?」



なんてベタなことを言うものか。

『結婚』なんて、なんてとんでもない単語を使うものか。

あまりにも不意を打たれ、思わず、のけ反る。



「でも、本当だよ?華さんが『栗山』になるかもしれないし、場合によっては、俺が『咲宮さん』になるかもしれない」

「そんなこと、急に言われても……」

「俺は何となく思ってたよ。だから、今日こそは言ってもらうつもりだから」

「え……」

「言わせるまで、帰すつもりないよ、俺」



思わず、言葉に詰まる。

栗山くんって、ここまでガンガン攻めてくる人だったかな。
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