【番外編】ないじつコンブリオ



静かに立ち上がる華を見て、取り巻いていた一同は、思わず半歩退いた。

水川は少し動揺していたが、強がってそれを必死に隠した。



「なんだよ」

「……そっちこそ何ですか」



水川は、静かに言い返されたことに再び固まる。

きっと驚きを隠せなかったのは、水川だけではなかっただろう。

華は、声量こそ聞こえない程だが、怒りという大きな意思を言葉にのせていた。



「そんなにかまってほしいん?」

「なっ…?!おまっ、ばっ、馬っ鹿じゃ……

「アホ曝すんもいい加減にして、ください」



それ以上、何も言えなくなった水川は逃げる様に教室から出ていった。

その背中からは、少しやる瀬ない、という雰囲気が漂っていた。

水川の仲間4、5人もそれを追いかけていく。

何人かがいなくなっただけだというのに、教室は驚く程、静かだった。

まるで別の空間であるかの様に。

しかし、華にとってはそうではなかった。

先程までの出来事も、たった今の孤独感も全て同じ場所で行われている。

もう一度、自らの頭に付けられ、そう簡単には取れそうもないねり消しゴムの残骸に触れる。

悲しい、悔しい思いが込み上げ、視界が自然と滲む。

泣き顔はみっともない、誰にも覚らせたくない、と俯き、隠そうとした時だった。
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