【番外編】ないじつコンブリオ



「や、やめて。そのドレスに触らないで……」



次に起こるであろう事態など、ハナの頭には容易に浮かびました。

ハナはあまりの恐怖に圧し負かされ、動けずにいたのです。

次の瞬間、布が破れる音が、耳をつんざきました。

ハナの顔は、みるみるうちに青ざめ、気づいた時にはもうドレスは、ただの布切れと成り果てていたのです。

ハナは、ミズカワ姉さんに立ち向かう勇気のない、何とも情けない自分を責めました。

素敵なドレスを与えてくれた父親を思い、ドレスの残骸を胸に抱くと、声を押し殺して泣きました。






その翌日の夜。

とうとう、舞踏会の時間が迫ります。

父親は未だ、仕事から戻りません。

義母とミズカワ姉さんを、作り笑いで送り出しました。

そのまま玄関に座り込むと、また涙が滲みます。

どうしたって、昨日のあの酷い出来事を、思い出してしまうのです。

その時突然、呼び鈴が鳴りました。



「は……「あ!あなたがハナ?」

「そうで……「いっつも家事、頑張っとるもんなぁ!よし!あんな酷い姉を見返してやりたいかぁー!!」



突然の夜のお客人に、ハナは目を丸くします。
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