【番外編】ないじつコンブリオ
「華ちゃん、大丈夫?」
そんな風に声をかけてくれたのは、一人の女子だった。
お下げ髪をしていて、目が真ん丸で色白、お人形の様に可愛らしい女の子だ。
周りは少しざわついている。
華は、あまりに突然のことだったため驚き、反射的に顔を上げてしまった。
女の子は真剣に心配している様で、華をまっすぐに見つめていた。
「あ、うん、大丈夫……です」
「でも、泣いてるよ」
「な、泣いてな──
華が言い切る前に、彼女の手は華の頭の上にあった。
そしてその手は、残骸を丁寧に取ろうとしてくれていたのだ。
「ほんと酷い奴ら……全然取れないし」
「もういいよ。ありがとう」
「でも……」
「あとは、自分で何とかする」
華は、親切してくれるこの女の子のことを何も知らなかった。
周りの目もあるというのに、そんなことも気にせず、声をかけてくれた。
とても強い子なのだな、ただそれだけ思った。
その出来事以降、彼女と関わることは一切無かった。
きっと友達か誰かに、何かを言われたのだろう。
あれだけ強い心の持ち主は、そういない。
心が一番、助けられた。
かなり印象に残る女子であったはずなのに、華はその子のことを徐々に忘れていった。
そして、13年後も忘れたままでいる。
会話をしたのは、中学生活3年間のうちのたった15秒。
覚えていることの方が、よっぽど難しいのかもしれない。
しかし、「出会いには確かに意味がある」のだ。
13年後の今、この女子と再開していることに、まだ華は気づいていない。
PlayBack Ⅰ
―出会いには確かに意味がある―
おわり。