【番外編】ないじつコンブリオ




ようやくお城に到着することができました。

お城の扉をそっと開くと、先程まで盛り上がっていたであろう場内は、しーんと静まり返りました。



「わわ、嫌な感じ……自分のことなんて気にせず、舞踏会を楽しめばいいのに」



ハナは過去に行っていた学校で、教室の扉を開けたときの感覚を思い出していたのです。

続いて、ゆっくりと中に入り、隅の方へ歩いていこうとしました。

しかし、慣れないヒールのせいで、転んでしまいます。



「大丈夫ですか?」



すると、偶然ハナの近くに居た警備中の兵隊さんが、ハナに片膝をつき、手を差しのべました。

ハナは、さらに注目の的です。

ただでさえ、場違いな自分を恥ずかしく思ったハナは、慌ててその場に立ち上がりました。



「だ、大丈夫です!お気持ちだけで……ありがとうございます」



お辞儀をした後、逃げるように去っていくハナの背中を、兵隊さんはただ見つめていました。

< 31 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop