【番外編】ないじつコンブリオ
ふと時計を見ると、気づけば12時になる、5分前でした。
「す、すみません。門限があるので……これで失礼します。お疲れ様でした!」
「えっ、ちょっ、お疲れ様て!仕事ちゃうんやから……!」
ここでみすぼらしい元の姿に戻ってしまってはいけない、と入り口まで急ぎました。
しかし、やはり慣れないヒールのため、また転んでしまいます。
「これで二度目ですよ。気をつけてください」
聞き覚えのある声の主の手が、ハナの目の前に現れました。
次は素直に、その手を握り、立ち上がりました。
「何度もすみません。ありがとう……」
ハナは起こしてくれた兵隊さんの目を見て、お礼を言うと、そのまま目が離せなくなってしまったのです。
しかし、自分に迫る危機を思い出し、ハナは慌てました。
「失礼しますっ」
「夜道は危険です。送ります」
「あなた、お仕事中ですよね。どうかお構い無く」
ハナは再び、走り出しました。