【番外編】ないじつコンブリオ
長い階段を駆け下りる途中で、硝子の靴が脱げてしまいました。
「わあっ、ぴったりやのに、脱げた……!ああ、でも、あそこまで戻っとったら、時間がない!せっかくくれたのに、ごめん、魔法使いさん……!」
長く大きな一人言を言い放ち、ハナはそのまま、家まで戻っていきました。
その一方、お城では。
兵隊 クリヤマさんは、先程娘に送ることを断られ、傷ついていました。
しかし、何とも危なっかしい彼女のことが気になり、後を追いかけました。
当然、どこにも彼女の姿は、もうありません。
クリヤマさんは、何気なく先の方を見つめると、階段に何か光るものが見えました。
それは、ハナの残した硝子の靴でした。
クリヤマさんは、王子に覚られないように、それを大切に自室へ持っていきました。
彼は何日かしてから、警備会社に頼み込み、有給をもらうことができました。
そして、硝子の靴を片手に携え、街をさ迷い歩いたのです。
すると、クリヤマさんに声をかけた女性がいました。
「なぁなぁ、なんであんたがそれ、持ってるん?それ、私があの子に、プレゼントしたもんなんやけど」
「この靴の持ち主を知っているのか?」
「もちろん」
そう言って胸を張る女性から、硝子の靴の持ち主の家を聞き出すと、頭を深々と下げ、さっそく向かったらのです。