【番外編】ないじつコンブリオ
「あら。また弁当、食べてないやん」
自分が帰ってくるなり、玄関先までお弁当を受け取りに来たお母さんが、そう言った。
重さで分かられてしまったらしい。
「ごめんなさい」
未だたっぷり中身の詰まったお弁当箱を持って、台所に入っていったお母さんを目で追った。
きっとあの中身は、生ゴミに捨てられてしまう。
毎朝、お母さんが早起きして、お父さんのお弁当と合わせて作ってくれている。
自分は毎日、食費を無駄にしている。
そして、自分は毎日、お母さんのしてくれていることも、無駄にしている。
どうしたって、申し訳なさが勝って、台所に足を踏み入れられない。
夕飯の時に食べようか。
そんなことを考えたこともあったが、それはそれでお母さんに虚しい思いをさせるのではないか、と怖くて出来なかった。
いっそのこと、もうお弁当は要らないと、伝えてしまおうか。
「お弁当箱、小さいのに変えたろか?」
夕飯を囲むテーブルで、お母さんに言われた。