花言葉が人をつなぐ
ヴァイオレットはリビングの椅子を勧められ、腰掛ける。リビングに置かれた棚の上には、トーリスと妻であろう女性、そしてトーリスによく似た娘の写真がいくつも並べられている。

「どうぞ」

トーリスが紅茶をヴァイオレットに渡す。ヴァイオレットはお礼を言い、紅茶に口をつけた。

「遠いところからわざわざ来ていただいて、本当にありがとうございます。娘のことが心配で……」

そう言い、トーリスは話し始めた。



トーリスはこの町でカフェを開いている。妻とは客と店主として出会ったそうだ。

二人は結婚し、すぐに娘のアイリスを授かった。幸せな生活がずっと続くと信じていたトーリスだったが、妻の言葉でそれは壊される。

「今日、癌だって言われたの」

妻が癌を患っていることがわかった。すでに末期で、手の施しようがないらしい。トーリスは妻から話を聞いている最中に大声を上げて泣いた。

妻は治療することを拒み、トーリスはその選択に異議を唱えることはなかった。治療しても治ることなどない。ならば、最期は病院のベッドの上ではなく家で迎えてほしいと思ったからだ。
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