花言葉が人をつなぐ
少年がそう言いスミレを指差す。野原には紫だけでなく、ピンクや白などのスミレも多く咲いていた。

「……私の名前なの」

少女は無表情のまま、憂いを含んだ声で言う。

「私の名前は、ヴァイオレット・ヘーデルヴァーリ」

今はもういない大切だった人がつけてくれた名前。スミレの咲き誇るこの季節に、ヴァイオレットは生まれた。

「ヴァイオレット……?君は、ヴァイオレットって言うんだね!僕はルートヴィッヒ・ブルー。よろしくね」

無表情のヴァイオレットとは正反対に、ニコニコしながらルートヴィッヒは手を差し出す。まるで、人形と人間が握手をしているかのようだ。

ヴァイオレットが握ったルートヴィッヒの手は、握手をしたことのある大人のものとは違う。柔らかく、きれいな手だ。

「ヴァイオレット、知ってる?スミレの花言葉」

「知らないわ」

ルートヴィッヒは楽しそうに紫のスミレを指差す。

「スミレは、色によって花言葉が違うんだ。紫のスミレは、ささやかな幸せ、誠実、真実の愛」
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