花言葉が人をつなぐ
次にルートヴィッヒは、白いスミレを指差す。

「白いスミレは、誠実、謙遜、あどけない恋、無邪気な恋」

そしてルートヴィッヒは、ピンクのスミレを指差した。

「ピンクのスミレは、愛、希望」

ヴァイオレットの目が一瞬大きく見開かれる。凍っていた氷が溶けていくように、記憶が頭の中を巡った。

星が煌めく夜、ベッドの上で母が言った。

「たくさんの愛を知り、人を愛せる人になれますようにという願いを込めて、あなたの名前をヴァイオレットにしたの」

ずっと、考えないようにしていた記憶。ヴァイオレットは胸にまた手を当てる。ルートヴィッヒはスミレを摘んでいた。



ヴァイオレットは、ずっとこの田舎で母とメイドとともに暮らしていた。しかしそれも今日でおしまいだ。

十歳になった春、ヴァイオレットは引っ越すことになったのだ。この田舎よりもずっと離れた首都で暮らす。

「ルート、元気でね」

優しく微笑み、ヴァイオレットは言った。ルートヴィッヒのような笑顔はできないが、彼と出会った三年でヴァイオレットは優しく微笑むことができるようになった。
< 4 / 39 >

この作品をシェア

pagetop