セカンドラブは魔法の味
病室で楽しそうに話をしている涼子と幸弥。
コンコン。
「失礼します」
看護師と一緒に、医師が回診に来た。
幸弥はちょっとだけ期待に満ちた目をした。
小柄の看護師と一緒に回診に来たのは、担当医師の心優。
白衣に紺色のズボンに白いスニーカー。
相変わらずマスクと長い前髪で左目を隠している心優。
幸弥が挨拶をすると、特に顔色を変える事もなく心優は挨拶をした。
「おはようございます。担当の、桜本です」
涼子は心優を見ると、きょんとした目をした。
看護師が検温する中、涼子はじっと心優を見ていた。
心優は症状の説明となどを、淡々と続けるだけだった。
「ねぇ、先生」
不意に涼子が声をかけた。
ん? と、心優は涼子を見た。
「先生、私のお母さんに会ったことあるでしょう? 」
「え? 」
心優は一瞬ギクっとした目をした。
「やっぱり会ったことあるよね? 」
「・・・何のことですか? 」
「ふーん。ま、いいわ。2週間もあるから、ゆっくり話そうね。先生」
ニコッと笑って心優を見ている涼子。
心優はそっと視線を反らして、看護師と一緒に病室から出て行った。