セカンドラブは魔法の味
抱きしめられると、心優はハッとなり、幸弥を突き放そうとしたが・・・。
「しばらく、このままでいて下さい」
幸弥の静かな声が、心優の動きを止めた。
ギュッと抱きしめられ、幸弥の鼓動が伝わってくる・・・。
トクン・・・トクン・・・規則正しい鼓動を感じると、心優の心に何だか暖かい光が差し込んでくるのを感じた。
心優が医大生の時。
体調が悪く、足元がフラフラしていた心優は、うっかり歩道橋で階段を踏み外して転落してしまった。
その時、偶然通りかかった春子が心優を助けた。
まだ結婚するちょっと前で、弁護士だった春子。
カチッとした黒いスーツ姿で、弁護士バッジをつけている春子はバリバリのキャリアウーマンのようにカッコいい。
救急車で心優を病院に運んで、暫く待っていた春子。
すると手術室から医師が出て来た。
「あの、どうかしたんですか? 」
春子が尋ねると、医師は少し焦った顔をしていた。
「輸血が必要です。貴女の血液型を教えて下さい」
「私、AB型です」
「よかった、患者さんもAB型なんです。輸血にご協力お願いできますか? 」
「はい、喜んで」
春子が輸血してくれたおかげで、心優は一命をとりとめた。
心優が目を覚ますまで、春子は傍にいてくれた。
身内がいなかった心優は、気が付いた時、ハル子が傍にいてくれた事がとても嬉しくて目を潤ませていた。