セカンドラブは魔法の味
「所長、申し訳ございません。電車が遅れていたんです。それで急いで来たんですが、遅れてしまいました」
猫なで声で真子が言った。
「それは大変だったね。分かったよ」
幸弥は特に怒ることなく言った。
真子は自分の席に行くと、仕事を始める。
カタカタとキーボードの音だけが響いている。
みんな真面目に仕事をしている中。
真子は鏡を見て化粧直しをしたり、携帯電話を見てメールを打ったりしている。
その様子を澄恵と一也はチラッとみているが、何も言わない。
幸弥はひと段落ついて手を止めて、パソコンを閉じた。
「今日は外出してくるから。戻りは15時になるよ」
「はーい、分かりました」
澄恵と一也が返事をした。
「あの所長、どちらへお出かけですか? ご一緒しますよ」
真子が色っぽい声で幸弥に行った。
「いや、特に同行は必要ないから。一人で行くよ」
それだけ言って、幸弥は事務所を出て行った。
真子はちょっと気に入らない顔をした。
「つまんないわ。ったく」
ブツブツ文句を言いながら仕事を始める真子。
澄恵と一也はクスっと笑っていた。