セカンドラブは魔法の味
秀樹に呼び出され休憩所にやって来た心優。
自販機なども置いてある休憩所。
この時間は誰もいない。
日差しが窓から入ってきて心地よい。
風も少しだけ空いている窓から入って来る。
テーブルをはさんで、秀樹と向かい合わせで座った心優。
「なんだか今日は、いつもと違うな」
と、秀樹は心優の顔を覗き込んだ。
「あれ? 左目、火傷の跡なくなっているんじゃないか? 」
「えっ・・・」
「それに、表情も柔らかくなっているな」
「はぁ・・・」
「相変わらず、俺には冷めた態度なのか? よっぽど根にもたれているんだな、あの言葉が」
心優はふとため息をついた。
「あの、話しは何ですか? 前置きが長いのは、嫌いなんです」
「そうだったな。いや、今更だけど。謝りたくて、あの時言った事は俺の本心じゃないから」
心優は思いだした。
今から半年ほど前。
この休憩所で、他の男性医師と集まって話していた秀樹がいた。
いい女はいないか? そろそろ結婚しなくちゃ。
男同士でそんな話をしているとき。
誰かが心優の事を話した。
「そう言えば桜本先生って、何であんな大きなマスクしてるんだ? 」
「ああ、なんか顔に火傷の跡があるらしいぜ」
「火傷? 」
「子供の頃に、火事に巻き込まれたらしい。詳しくは知らないが」
「そっか。・・・なぁ秀樹、お前さぁ桜本先生に優しいけど。もしかして気があるわけ? 」
からかうように男性医師が言うと。
「まさか、部下だからだよ」
「へぇー。そう言うわりには、随分優しいって看護師達が焼きもち焼いてたぜ」
「それは違う。あんな醜い顔だから可哀そうだろ? 優しくしてあげなきゃ。誰もが避けて通るんだぜ」
「え? ちょっと、それは酷いかもしれないぜ」
「本当の事じゃん」
と、秀樹が話していると、休憩所に来た心優が偶然にも話を聞いていた姿が目に入った。