婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「そんな……私、お役に立てるかどうかもわからないのに……」
根本は〝人のため〟という同じ軸にあるかもしれないけれど、介護ヘルパーと結婚相談場のお仕事では全くジャンルだって違う。
果たして、私に務まるのだろうか……?
「仕事自体に関しては心配いらないよ。うちがどういう業務を行っているのか、各部署を見てもらって、その上で里桜が一番興味深いと関心を持ったところに配属するつもりでいるから」
そんな話をしていると、黙って運転をしていた和久井さんが前から「その件なのですが社長」と口を挟んだ。
「中途採用という形は、社員たちにいらぬことを勘ぐられます。ここは、里桜様が社長の婚約者であることは伏せた方が、里桜様の働きやすさも確保できるかと」
雇っていただくという話になった時から、どんな形で入社するのだろうと密かに考えていた。
社長の知り合い、まさかの婚約者なんてことが社内で知れ渡れば、私自身もだけど周囲の人たちだってやりづらいに違いない。
「伏せる必要があるか?」
「わ、私は、和久井さんの提案に賛成です」
横から意見すると、貴晴さんは不満そうに目を細めた。