婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「お疲れ様でした」
車を駐車すると、和久井さんがすぐに後部座席のドアを開けにきてくれる。
貴晴さんに続いて「ありがとうございます」と車から降り立つと、貴晴さんは「ごめんね」と私を見下ろした。
「駐車場まで来てもらっちゃって」
「いえ、そんな! ここが、オフィスなんですか? すごいオシャレな建物……」
「うん、本社はここなんだ。お客様も直接相談で訪れる場所だから、わかりやすくて明るい雰囲気にね。建て直したのは二年前なんだけど」
「そうなんですね……」
地下から地上へとエレベーターで上がっていく。
和久井さんは階数指定に最上階の七階のボタンを押していた。
「一、二階はお客様が相談に訪れるためのフロアで、三階から六階が各部署が入るオフィスになってる」
「わぁ……すごい」
到着した七階フロアは、グレーカラーのグラデーションになった絨毯が敷き詰められ、エレベーターを出た正面はガラス張りの通路が広がっていた。
表参道の景色が一望できるそこから、左右に広くフロアが開ける。
さっき外観から見た打ちっ放しコンクリートとガラス造りの建物の中は、とても明るくスタイリッシュな空間だった。
和久井さんが先を歩き、通路を左奥へ進んだ先の部屋の扉を開ける。
そこは貴晴さんの社長室で、やっぱり広くオシャレな空間となっていた。