婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「本社での部署は、ここに書いてある通り。何か興味ある部署とかありそう?」
「そうですね……」
総務に経理、人事に広報……。
そんなよく聞く部署よりも目につくのは、この会社ならではの部署だ。
しかし、婚活コンシェルジュはいきなり飛び込むにはハードルが高そうな仕事だと思われるし、アプリ関係は専門的な技術がないと難しそうだ。
「この、イベント企画部というのは……?」
「ああ、これは里桜が友達と来てくれた婚活パーティーとか、ああいう婚活イベントを企画運営してる部署だよ」
「へぇ~……」
「興味ある?」
「そうですね……直接お客様にお会いして働ける仕事が、性に合ってるかなって思って」
少ない仕事経験からいっても、裏方の事務職よりも大変でも直接相手に関わって動く仕事の方が自分には合っていると自覚している。
だから、働くならオフィスでひたすら業務をこなす部署より、現場で動くような方がいいはずだ。
「なるほどね。人のために働きたいっていう、里桜らしい希望だね。じゃあ、この課で働いてみる? ちょうど、人を増やそうかと言っていた部署なんだ」
「そうなんですか? でしたら、ぜひ! 早く仕事を覚えて戦力になれるように頑張ります!」
つい力が入ってしまう私の様子に、貴晴さんはくすっと笑っていた。