婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
それからすぐ、貴晴さんは和久井さんに私の要望を話し、社内五階にある『イベント企画部』に連れていってくれた。
ビルの外観や社長室を見て想像はついていたけれど、オフィス内も同様にオシャレな造りだった。
都心の、それも表参道にもなると、オフィスもこんな素敵なのだろうか。
以前働いていた会社のオフィスを思い出すと、ここのオフィスは異世界同然だった。
「これからこの部署に配属されることになった、紀平里桜さんだ。彼女は中途採用ではなく、私の知り合いで他からうちに来てくれることになった――」
貴晴さんが直々に紹介をしてくれ、恐縮して横で待機する。
イベント企画部の社員はざっと見て十名ほど。女子の比率が高い。
「うちでの仕事は何もかも初めてだから、よく指導をお願いします。じゃ、紀平さん挨拶を」
「あ、はい。紀平里桜です。少しでも戦力になれますよう努力しますので、ご指導のほどよろしくお願いします」
社長の知り合いで入ってきたという私に、イベント企画部の人々は口々に「よろしくお願いします」と挨拶をしてくれた。
湧き起こる拍手の中、〝ここでは上手くやらなくては〟という慎重になる気持ちが強く表れていた。