婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
フリータイムのその間も、私は飲むことで時間をやり過ごしていた。
パーティーもお開きが近付くと、開催スタッフから自由解散の声がかかる。
「日菜子、いいの? もう終わっちゃうけど」
ちらほらと会場をあとにしていく姿も見え始め、日菜子に声をかける。
結局相手に女性が絶えずついていて、日菜子はまだ気になる人と話せていなかった。
「うん、もういいや。あの調子じゃ、誰かとこのあとどっか行く約束してそうじゃない?」
そんな日菜子の声を聞きながら、そのお目当ての男性がこっちに向かってやってくるのが目に入る。
思わず「え、日菜子、こっち来る!」と口にしてしまった。
「もう帰りますか? もう少し話せたらと思って」
清潔感のある塩顔の男性。若手俳優にこんな顔の人がいたなと思いながら、日菜子を目にすると、珍しく緊張したような空気を発していた。
どうやら日菜子が気になっていた男性も、日菜子に声を掛けようと思っていたようだ。
「日菜子、私、お手洗い行ってくるから」
気を利かせて立ち去ることにする。
去り際、日菜子に顔を近付け「上手くいきそうならふたりで帰っていいよ」と耳打ちをした。