婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 リビングを出て玄関に向かうと、ちょうど革靴を脱ごうというところだった貴晴さんの姿があった。


「おかえりなさい」


 急いで出ていき、カバンを受け取る。

「ただいま」と言った貴晴さんは、カバンを手渡した手でそのまま私を引き寄せた。

 ふわりと貴晴さんの香りに包まれる。

 私を抱き寄せた貴晴さんは耳元に顔を埋め、「あー、里桜だ」と脱力した声を出した。

 こうやって抱きしめられるだけで未だにドキドキしてしまう。


「お疲れ様です。夕飯、食べられますか?」

「うん、ありがとう。里桜もまだ?」

「はい。じゃあ、用意しますね」


 すぐにキッチンに入り、食事を出す支度を始める。

 リビングに入ってきた貴晴さんは、「そういえば」とキッチンにいる私に声をかけた。

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