婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 せっせと椅子を運んでいると、照井さんが小走りで近付いてくる。


「あ、会場つくりがまだ仕上がってないので、お手伝いを……」


 アルバイトスタッフが数名遅れるということで、会場セッティングがまだ完了していなかった。

 現地スタッフに指示をしてもらい、座席等の場所つくりをしていたのだ。


「そういう力仕事はしなくていいから」

「え、でも、手が空いていたので」

「現地のスタッフがやってくれるから、休憩してていいんだよ、真面目だなー」


 じっとしているのもどうかと思って、すぐに何か仕事がないか探してしまうのは性分なんだと思う。昔から変わらない。


「そうそう、芳賀さんが衣装チェック始めたんだけど、紀平ちゃん何選んだの?」

「あ、はい。着ぐるみを着る予定です」

「着ぐるみ!?」


 場の雰囲気を盛り上げるために、立ち会うスタッフも簡単な仮装をするという。

 私は丸ごと姿が隠れる着ぐるみを事前に選んでいる。

 施設で働いていた頃もイベントごとではサンタになったり鬼になったり、進んでやっていたからこの手の仕事はお手の物だ。


「なんだ、着ぐるみって。もっと可愛らしいのやればいいじゃん。勿体無いよ、顔まで隠すとか」

「え、そうですか? 着ぐるみは着たことないので、実は結構楽しみだったり……」

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