婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「これ、この衣装にしてもらってもいい? 一昨年から使ってるやつなんだけど、新作じゃないやつをスタッフが着用した方がいいかなって」
芳賀さんの話に、照井さんが「あー……」と納得したような声を出す。
「このイベント、毎年出てる常連さんもいるからね。確かに衣装覚えてそうだし……」
「常連さん……そうなんですか……」
「そういうわけで、紀平さんよろしくね」
ハンガーごと衣装を受け取り「わかりました」と返事をする。
着ぐるみからずいぶん違う仮装になっちゃったなと思いながら、引き続き準備に取りかかった。
それから約一時間後の、午後六時前――。
続々とイベント参加者が来場し、受付を済ませていく。
友人同士など数名で参加する人たちが多く、衣装選びは盛り上がりをみせていた。
「こちらからお選びになりましたら、奥に更衣室のご用意があります」
私は衣装そばでお客様の案内係。
眼下の自分の姿に、思わず近くにある衣装チェック用の姿見に自分の姿を映して確認していた。