婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
着ぐるみの予定だった衣装は大幅な変更で、擬人化猫の衣装を身に着けることになってしまった。
猫耳にひげ、肉球の手に長い尻尾……。ベースは仮装らしく男性が好きそうなミニのワンピースだ。
可愛いといえば可愛いけど、私にはこういうのより着ぐるみの方が性に合っている。
ワンピースの丈が短くてボリュームがあるのも気になるけど、それより気になるのは胸元のデザインだ。
さっきから気にしてぐいぐい上げているけど、デザイン的に危うい。
まぁ、自分が気になるだけで、人は大して気にもしないか……。
人が集まってくると、いよいよイベントが開始時間を迎える。
通常の婚活パーティーでは女性ははじめに座った席のまま、男性が一定の時間でとなりにずれていくという席移動の方法を取っている。
しかし、今日のハロウィンパーティーの席は基本的に自由席。
お目当ての人にどんどんアプローチしてもらって構わないのだ。
「結構盛り上がるんですね……」
開始から約一時間。
パーティーが始まると、会場内でトラブルがないかの見回りを行う。
会場隅で様子をうかがいながら、一緒に立つ芳賀さんに小声で話しかける。
芳賀さんは今日のこの現場責任者なため、ふざけた格好ではなくパンツスーツのままだ。