婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 まさかそんな話をされると思ってもみなかった私は、満面の笑みで迫ってくるお客様に上手い言葉が出てこない。

 下手なことを言って怒らせてしまったり、クレームがついてはまずい。

 そう思うと、邪険にもできないと思ってしまう。


「はっきり言って、今日の参加者、好みの女性がいなくて。今日、この仕事終わったら時間とかありませんか? 外で会えたら」

「えと、そういったことは……」

「そんなこと言わないでさ、ね?」


 飲み放題ですでに酔いが回っているのか、男性客の手が私の着るワンピースの裾に触れてくる。

 そのままストッキングを履いている太腿に触れてきて、「やっ!」と思わず声を上げてしまった。

 そんな時だった。


「お客様」


 低く通る声と共に、私に触れていた手が引き剥がされる。

 ハッとして顔を上げると、そこには厳しい表情を男性客に向ける貴晴さんの姿があった。

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