婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
近くのパーキングに停めた貴晴さんの車に乗せられると、車はすぐに池袋の賑やかな駅前を離れていく。
「具合が悪そうだなんて嘘ついて、ごめんね」
「いえ……私こそ、ご迷惑をかけてしまってすみません」
貴晴さんが「ううん」とした返事を最後に、車内は沈黙が流れる。
そのうちに車は見慣れた景色の中を走り始めた。
「あの、貴晴さんお仕事は……?」
「今日はもうこのまま帰ることにしてあるんだ」
そう、なんだ……。
仕事の合間に少し覗きに来たのかと思っていたけれど、どうやらこのまま帰宅するらしい。
マンションの車寄せに車を停車させると、いつも通り助手席の私を降ろしてくれる。
そのまま手を取られしっかりと握られると、普段はほとんど繋がれない手に鼓動が高鳴った。
貴晴さんは私を連れてエントランスへと向かっていく。
顔なじみになってきたコンシェルジュに車を託し、エレベーターへと向かった。
今更ながら、会場をそのまま連れ出されて仮装のままで歩いていることに気恥ずかしさを感じる。
すぐに車に乗ってマンションまで直行し、会ったのはエントランスのコンシェルジュくらいだったけれど、やっぱりこの格好で外を歩くのは居たたまれない。
やっと部屋までたどり着くと、貴晴さんはドアを開け私を先に中へ入れてくれた。